歯医者さんが教える!歯の神経を温存することの難しさ③
投稿日:2022年9月5日
カテゴリ:ドクターズブログ
こまい歯科の小泉です。(vol389)
歯の神経を温存することって、実は意外と難しい・・・。
今日は3つ目の要素、患者さん側の部分です。
(他の2つは前回、前々回の記事を参照ください)
皆さんは
「歯は痛くないから大丈夫でしょ?」
と思いませんか?
実はこのセリフ、患者さんの9割以上の方がおっしゃいます。
ところが、ここに落とし穴が潜んでいる場合がとても多いのです。
どういうことか?といいますと、
その背景には
「痛くないから状態は悪くないはずだ」
という自己診断が必ずと言っていいほどあるからです。
一方、今では
虫歯が象牙質に到達すると全ての場合で
歯の神経に虫歯菌が侵入してしまっている、
ということが新しい常識になっています。
つまり、「痛くない」状態が必ずしも「悪くない」とは言えないわけです。
一番困るのが、「痛くない」状態において、治療すると痛みが出るケースです。
こういう場合はどうしても事後にしかわかりませんが、
要するに歯の神経が既に炎症を起こしており、
しかも治療しても回復しない状態
であったことを明確に物語るものであります。
では「痛くない」のに回復しないほど悪い、とはどういうことか?
それは炎症が慢性、かつ不可逆性(=元に戻らない、回復しない状態)である
ということです。
(米国では慢性不可逆性歯髄炎と呼んでいます(日本では正式名称ではありませんが))
こういう場合は歯の神経を温存することは不可能なのですが、
患者さんのご理解がいただけないと患者さんは必ず誤解して
「あの歯医者さんが治療したら痛くなったじゃないか!
おかげで歯の神経を取る羽目になってしまった・・・」
とおっしゃるでしょう。
これでは、治療する側の歯医者さん達もたまったものではありません。
もし皆さんが歯医者さんだったら、どうでしょう?
患者さんに高確率で誤解されてしかも反感を買うと分かっていて、
あえて神経を温存しようと思えますか?
さすがに厳しいのではないでしょうか?
なので、歯医者さん達も、患者さんの考え方によっては
歯の神経を良かれと思って温存しても責められることがわかっているなら
最初からもう温存は無理だ、
という診断を下さざるを得なくなる、
という場合もあり得るでしょう。
こういう点から見ても、歯の神経を温存する、ということは
案外難しいものがありますね・・・。
これらのことを踏まえた上でしたら、
歯の神経を温存できそうなら温存にチャレンジする、というのは
やはり歯の治療における王道であることは間違いありません。
よく担当医の先生とご相談ください。
をお探しの方はこまい歯科までご連絡ください。
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