欠けた前歯の審美症例
欠けた前歯をセラミッククラウンで修復した症例
上の前歯が欠けたため来院された40代女性の患者さんです。もともと歯の真ん中側にレジン充填(プラスチックみたいな白い詰め物)が入っていましたが、それが取れてしまっていました。過去にも同じ脱離を数年ごとに繰り返しておられ、いよいよ大きく欠けてきました。ご相談の結果、取れづらくてきれいに仕上げるため、セラミックのかぶせ物をすることとなりました。
土台の歯の形成
続いて、歯と歯肉の間に圧排糸と呼ばれる専用の糸を歯の全周に渡って挿入していきます。この圧排という操作により、最後にセラミックを入れた後の歯との継ぎ目をきれいに隠すとともに、歯肉に炎症を起こすのを防ぐ効果があります。ただし、この操作はとても繊細に行う必要があります。なぜなら力を入れすぎると歯肉が痛めつけられて減ってしまうからです。ここは審美歯科における大事なポイントの1つです。
圧排糸を入れることで歯肉の下に隠れていた歯の部分が露出します。その部分をメインに慎重に削っていきました。
歯の周囲のヘリの部分は一部反り返っていますが、歯肉を極力傷つけないようにするため、一時的にこのような形になっています。これは次のステップで修正予定です。
次に低回転でブレの少ない機械(5倍速コントラ)ときめ細かい器具で細部まで歯の形を整え、磨き上げます。その後、汚れや細菌が付着しにくいように特殊なお薬を塗ります。
知覚過敏を抑えるお薬を塗布
最後に汚れや細菌が付着しにくいように、また神経のある歯には知覚過敏抑制効果のために、特殊なお薬を塗ります。ミクロの世界では図のように、シュウ酸カルシウム結晶を形成することで細かい溝や穴を防ぐ効果があるからです。
仮歯の装着
仮歯をその場で作って土台の歯とぴったり合わせます。この状態で1週間待つことで、歯肉と最終的な歯がなじみやすいかどうかを確認します。(右の画像)仮歯を右真横から観察したところです。歯肉からの歯の立ち上がりの角度を確認しました。患者さんからは評価されにくい部分ですが、実はこの点もしっかり作り込んでおかないと中長期的には問題を起こしかねないため、大事なポイントとなります。
仮歯を装着して1週間後
仮歯を入れてから1週間後。歯肉の炎症が取れ、歯と歯肉の位置関係も問題なかったため、歯型を取りました。歯の色がやや複雑であったことから、写真を撮影し、歯科技工士さんに送りました。
セラミッククラウンの作成
歯型から作った石膏模型です。歯と歯肉の境目の位置、そして削ったラインが滑らかに歯の全周をたどれていることが確認できました。
完成したオールセラミッククラウン(Sクラス)です。製作は経験豊富なジルコニアセラミックス東京の齋藤氏に依頼しました。
治療完了
オールセラミッククラウン(sクラス)を歯に装着したところです。この患者さんは歯によって色がそれぞれ微妙に異なること、左隣の歯が一見着色しているようで実はもともと茶色くなっている上に斜めに削れていることなど、いくつか複雑なポイントがありました。
それらをうまく反映させて最終的な歯を完成させることができ、患者さんも「自然な歯ですね」と喜んでいただけて何よりでした。
年齢/性別 | 40代女性 |
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治療期間 | 1ヵ月 |
治療回数 | 3回 |
治療費 | ジルコニアセラミッククラウン(Sクラス) 147,000円(税込161,700円) |
リスクなど | ・かぶせ物のセラミックが欠けたり割れる可能性がある。 ・将来歯の神経に炎症が起きて根管治療をしなければならない可能性がある。 |