抜歯と診断された歯をエクストルージョンで保存した症例
抜歯と診断された歯をエクストルージョンで保存した症例
2ヵ月前に犬歯に歯を作ったが、もう取れてしまった。「そこの歯医者で歯を抜くよう言われたが、あきらめきれず、ネットを探したところ、Dr小泉の症例を見て受診した」とのことです。仮歯が前後の歯と透明な接着剤で留めてあるのがわかります。
ご相談の結果、部分矯正で犬歯を下に引き出して歯の寿命を延ばすエクストルージョンという方法を選択することになりました。
エクストルージョンの実施
歯肉に埋もれていた部分の歯を露出させ、虫歯も取りました。
続いて犬歯に矯正装置をつけていきます。仮歯を両隣りの歯に接着させ、裏側に金属線を走らせます。犬歯の内部に釣り針状に加工した金属線にゴムを引っかけて犬歯を下に引っ張り出します。外側からはほとんど装置が見えない状態なので目立ちません。
治療開始から4ヵ月後。レントゲン上では歯の長さが13.0mmでした。治療前の歯の長さが16.0mmです。歯が伸びて仮歯にぶつかるたびに歯を少しずつ水平に削ったので、トータルで約3mm歯を引き出した計算になります。歯肉も歯と一緒に下に伸びてきましたがこれは後日調整する予定です。
外科処置直後です。仮歯と歯肉の間に歯が少し露出しています。この部分は歯肉がしっかり落ち着く3か月後に仮歯を合わせ直します。
それと実はもう少し歯肉を上の方まで上げようかと考えていました。しかし実際に手術したところ、この患者さんのこの歯の部分における歯肉と顎の骨の厚みが両方とも薄かったことが判明しました。
このような場合、長期的には歯肉が上に上がっていきやすいです。そのため、歯肉を上に上げる量をあえて控えめにしました。
かぶせ物の作製
患者さんのご希望によりEmaxクラウンを作成しました。Emaxはその組成が二ケイ酸リチウムガラスセラミックです。そのため透明感が強めであることから、前歯の場合、歯の色が合わせづらかったりトーンが暗めになる可能性があることを予めご了承いただきました。
かぶせ物の装着・治療完了
装着直後の写真です。患者さんご本人のご希望により「周囲の歯より少し白めに仕上げたい」ということで色を選択しました。写真のように私は普段から歯を拡大して観察するため、専門家としてはやや白めに思いました。
一方、ご本人は希望通りになったことに大変喜んでおられたので「これがこの患者さんにとっては正解なのだ」と私も納得しました。施術開始からお正月を挟んで8ヵ月経過しました。とても長い期間かかりましたが、抜歯を回避してここまで回復できたことを喜んでいただけて何よりです。
年齢/性別 | 40代女性 |
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治療期間 | 8ヵ月 |
治療回数 | 12回 |
治療費 | エクストルージョン 100,000円(税込110,000円) ファイバーコア 26,000円(税込28,600円) emaxクラウン 115,000円(税込126,500円) |
リスクなど | ・歯と骨がくっついていた場合はエクストルージョンができないが、それは施術してみないと分からないことがある。 ・エクストルージョンにより相対的に歯が短くなるため、歯根破折のリスクが残る。 ・根尖病巣が将来発生する可能性がある。 |