意図的再植により末期的状態の歯を温存した症例
意図的再植により末期的状態の歯を温存した症例
こちらの患者さんは他医院でかみ合わせを改善するために奥歯全体を削られたら歯の神経を取ることになってしまった。しかし、神経を取ったのにまた痛くなってきた。ということで当院を受診されました。
歯がかなり削られて、内部の象牙質が大きく露出していました。また、かみ合わせを合わせるために詰めたであろうレジン(プラスチック状の詰め物:青矢印)と、歯の神経の処置(根管治療)をした後の仮の蓋(黄矢印)、そして虫歯(赤矢印)が認められました。
もともと厳しい状態でしたが「どうしても歯を抜きたくない」ということで精密根管治療を実施しました。さらに治りの悪い歯根だけを切り取るトライセクションも併用し、一度はかぶせ物まで装着しました。しかし。その5ヵ月後に内側の歯肉が腫れてきました。
CTによる精密検査
CT撮影してみると、歯根の先が大きく黒く抜けていました。歯根が折れているかどうか?はCT上ではわかりませんでしたが、いずれにしても抜歯対象となるレベルでした。それでもご本人の「何とか歯を温存したい」というご要望に沿うため、最後の手段である意図的再植に踏み切ることとしました。
意図的再植術の実施
抜歯した歯は生理食塩水に漬け、施術中もこまめに生理食塩水で濡らしながら処置をします。もし歯を乾燥させてしまうと、歯についている細胞(歯根膜)が死んでしまって、再植してもうまくいかなくなってしまうからです。
意図的再植術後のCT精密検査
意図的再植術後4ヵ月の時点でCT撮影をしました。早くも歯根の周囲に顎の骨が再生していることを確認できました。(青矢印)違和感もなく、歯自体も動揺がなく、歯肉も引き締まっていたため、かぶせ物を製作することとしました。
かぶせ物の製作
かぶせ物(オールセラミッククラウン(emax))を製作しました。製作は経験豊富なジルコニアセラミックス東京の齋藤氏に依頼しました。
治療完了
かぶせ物(オールセラミッククラウン(emax))を装着した直後です。歯肉の下深くまで歯がなかった部分の歯肉はまだ赤味がありますが、時間と共に回復する見込みです。患者さんご本人にもその点をお伝えし、全快するまではやさしく丁寧にケアするようご留意頂きました。
年齢/性別 | 30代女性 |
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治療期間 | 1年5ヵ月 |
治療回数 | 9回 |
治療費 | マイクロスコープ根管治療90,200円(税込) CT撮影診断料11,000(税込) MTA加算23,100円(税込) ファイバーコア27,500円(税込) オールセラミッククラウン(e-max)121,000円(税込) トライセクション23,100円(税込) 意図的再植術132,000円(税込) |
リスクなど | ・将来再び歯根が折れる可能性がある ・意図的再植術の際に歯が折れる可能性がある ・再植後に歯が定着せずに脱落、もしくは歯根吸収する可能性がある ・意図的再植術には保証がない ・セラミックが割れたり欠けたりする可能性がある など |