フロスの際にしみる奥歯を精密根管治療によって改善した症例
フロスの際にしみる奥歯を精密根管治療によって改善した症例
こちらの患者さまは、フロスをすると奥歯がしみる、とのことで来院されました。10年以上前に詰め物をしたそうです。冷たいものはあまり口にされておらず、お口も狭いせいか、問題の歯が冷たいものや温かいものに対してしみるかどうか?がわからないようでした。
そこで検査を行った結果、冷たいものに対してやはりしみることが判明しました。
レントゲンを撮影したところ、歯の神経に歯髄結石らしきものがありました。また、歯の神経が著しく細くなってもいました。これらの所見は、歯の神経に長期間に渡って細菌感染による炎症が起きていることを示唆しています。
また、歯根の先が著しく曲がっていることもわかりました。この歯の根管治療は比較的難易度が高いのではないか?と予想されました。患者さんは「できるだけ歯を抜きたくない、長持ちさせたい」とのことで、ご相談の結果、精密根管治療を行うこととなりました。
応急処置~精密根管治療の実施
その後、初回の精密根管治療の予約までの間に痛みが出てきてしまったため、応急処置をしました。
日を改めて、精密根管治療を開始しましたが、幸い、応急処置にて痛みはある程度落ち着いたとのことで、患者さんもホッとされていました。
精密根管治療は最低でも60分、通常90分のお時間を確保しております。仕切り直したこの日も90分のお時間を確保しておりましたのでじっくり治療することができました。
まず最初に、問題の歯に対してラバーダムというゴムのシートをかけます。次に、できるだけ無菌に近い状態とすべく消毒薬にて殺菌を行います。このやり方は全身手術とほぼ同じです。(写真の茶色く見えている液体がその薬剤です)
応急処置では歯の神経の上部を取り除きましたが、歯根の中まではあえて触りませんでした。これはロサンゼルスで開業されている精密根管治療専門医で私の先輩の先生から教えていただいたやり方です。
事前の診査で神経が著しく細いことがわかってはおりましたが、確かに神経の入り口である根管口がとても小さいことがわかりました。この時点では根管口は2ヵ所だけに見えましたが、いろんなケースがあることを知っておりますので過去の経験を踏まえて、油断せず進めてまいります。
まずは極細の器具で根管口を少しずつ広げていきます。
入口がある程度広がり、歯根の中央あたりまで歯の神経を取ったところで、異変に気づきました。根管(神経の管)の壁に白い物体が見えたのです。
これが別ルートの根管なのか?それとも同じ根管だけど溝があって、そこにいる歯髄組織なのか?のいずれかではないか?と予測されました。(肉眼での治療だったら決して発見できない場所ですので見落としていたことになります。)
殺菌・消毒・洗浄し、乾燥させたところです。歯髄組織の取り残しがないことを念には念を入れて確認します。
細菌の繁殖スペースを残さないよう、空洞になっている根管を充填していきます。当院のマイクロスコープを用いた精密根管治療では、米国の根管治療専門医が主流にしている垂直加圧充填を採用しております。
治療完了
年齢/性別 | 60代女性 |
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治療期間 | 3日 |
治療回数 | 2回(応急処置1回、精密根管治療1回) |
治療費 | マイクロスコープ根管治療(大臼歯) 110,000円(税込121,000円) |
リスクなど | ・5~10%の確率で将来歯根が膿んでくる可能性がある。 ・ごく稀に、もともと歯根に亀裂が入っており、治療しても改善しない場合がある。 ・歯の神経が非常に細いケースでは、場合によって完全に根管が閉鎖して治療しきれないこともあり、その場合は治療の成功確率が下がる可能性がある。 ・歯根が曲がっている場合、治療器具が途中で破折するリスクが高まる。 【注意点】根管治療だけでは治療は完結しません。通常はこの後、土台とかぶせ物が必要となります。費用もその分追加になります。 |