矯正治療症例 40代女性(叢生)
抜歯せず歯も削らずに歯並びを改善した成人矯正の症例
こちらは歯並びがデコボコしていて気になるので治したい、ということで来院された40代女性の患者さんです。
ご本人は特に下の前歯のデコボコを改善したい、とのことでした。ただ、実は上の歯もそれなりにデコボコがあります。そのため、下の歯並びだけを治そうとしても、上の歯に規制されてしまうので歯がうまく並びません。ご相談の結果、全体的に歯並びを治す矯正治療を行うこととなりました。
【写真:左】右真横から見た状態です。前歯はさておき、犬歯から奥歯にかけては、前後的には比較的正常とされる関係(Ⅰ級)のかみ合わせになっていました。ただ、噛み込み自体が正常に比べて浅いです。
【写真:右】左真横から見た状態です。下の歯が上の歯に比べて全体的にやや前に出ています(反対咬合の傾向)。
唯一の難点は、歯を並べるスペースがギリギリであることです。できるだけ歯を抜いたり削ったり(※IPR)することは避けたいと考えてはおりますが、どちらに転んでも不思議ではないケースです。患者さんにはその点ご了承いただいた上で、まずは歯を抜かない、削らない、という方針で可能な限り治療を進めていきました。
※IPR・・・歯のエナメル質を僅かに削り、歯幅を小さくすることによって、歯が収まるスペースを作り出す処置。
矯正治療の開始
まずは上の歯だけに矯正装置をつけます。上下の歯に同時に装置をつけることも可能ですが、それだと痛みが強く出やすくなります。
また、噛み合わせによる外傷で歯や顎まで痛くなる場合も稀にあるため、なるべく負担を減らす配慮から、時間差で下の歯に装置をつけることとしました。
矯正治療終了
矯正治療を開始してから1年5ヵ月弱。やはり歯を抜くか抜かないか?あるいは歯を削るか削らないか?のギリギリのケースであったことから、微調整には著しい時間を要してしまいました。(通常だと1年程度で終わる)
ただ、歯を抜かず、一切削らずに歯並びをここまで改善し、無事に安定させることができました。
【写真:左】右真横から見た状態です。左側と同じく、前後的にⅠ級と呼ばれる正常なかみ合わせになっており、上下の歯が緊密に噛んでいます。
【写真:右】左真横から見た状態です。前後的にⅠ級と呼ばれる正常なかみ合わせになっており、上下の歯が緊密に噛んでいます。
歯の保定/定期観察
矯正装置が外れた後は、必ずリテーナーを使用していただきます。製作は矯正専門歯科技工会社ASOインターナショナルに依頼しました。
リテーナーを使用しないと歯が後戻りしてしまうので、あとは定期観察をしながらチェックしていきます。
年齢/性別 | 40代女性 |
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治療期間 | 1年5ヵ月 |
治療回数 | 29回 |
治療費 | 852,000円(税込937,200円) |
リスクなど | ・治療後の歯並びはある程度は予測がつきますが、完全に当てることは不可能です。 ・必要に応じて抜歯やIPR(歯と歯の間を削る)が必要になる場合があります。しかも治療前に全てを予見することも不可能です。 ・矯正治療後の歯並びの見え方は一律ではありません。これは、元々の歯の状態、歯並び、骨格など、人それぞれで状態が違うためです。つまり、顔がひとそれぞれ違うように、歯並びも個性を反映したものになります。 ・必ずしもご希望の歯並びになるとは限らないため、担当医とよく相談し、イメージをすり合わせておくことも大切です。 ・歯の移動に伴って一時的な痛みが出る場合があります。 ・歯がもともと骨に癒着していて動かない場合がまれにあります。 ・虫歯・歯周病の発生や歯根吸収のリスクがあります。 ・甘いものを食べたり飲んだりする習慣がある場合や、もともと歯ブラシ・デンタルフロスのやり方が良くない場合、虫歯や歯周病のリスクが高まります。 ・治療後に歯肉が下がる場合があります。 ・治療後はリテーナーを使用しないと歯の後戻りの可能性が高いです。 |