歯根が曲がった歯に実施した精密根管治療の症例
歯根が曲がった歯に対して実施した精密根管治療の症例
歯がズキズキするようになったため来院された50代女性の患者さんです。
この歯は3年前、すでに歯の神経ぎりぎりまで虫歯が進行していましたが、何とか虫歯を完全に取りきった上で歯の神経を温存しました。
しかし、それにも関わらず3年経ってから痛みが出現してきてしまいました。そのため、さすがに歯の神経を温存できる状態ではないと判断し、ご本人とご相談の上で歯の神経を取ることにしました。
根管治療の実施
歯の神経にアプローチするため、歯の上から穴を開けていきます。まずは詰めてある金属をくり抜きました。
すると写真のように白い物質が顔を出しました。これは3年前に虫歯だったところに詰めた歯の神経の保護材です。
白く見える歯の神経の保護材を削っていくと、歯の神経がすぐ露出しました。3年前の虫歯がいかに深かったかがこのことからも分かります。
神経部分から透明な液体が混ざった状態での出血が確認できました。これはまさに「急性漿液性歯髄炎」もしくは「急性単純性歯髄炎」と呼ばれる状態に該当し、症状とも一致します。
出血が治まったところです。歯の神経が非常に細くなっていることが分かります。これは石灰化と呼ばれる現象で、加齢の影響もありますが、主に虫歯菌の影響でここまで石灰化が進行したと推察されます。
結果論にはなりますが、石灰化はかなりの年数を要することから、3年前に虫歯を取りきってはいても当時すでに「歯の神経は温存できる限界を超えてしまっていた」と考えられます。
続いて歯根に向かう神経の入り口を探します。写真の青矢印の通り、細い器具が入っていく場所がその入り口の1つです。この歯の場合は通常3か所の入り口があり、写真の黄色い点線円の通り確認できました。
根管の拡大・クリーニング・根管充填の実施
術後のレントゲン写真
年齢/性別 | 50代女性 |
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治療期間 | 2日 |
治療回数 | 2回 |
治療費 | マイクロスコープ根管治療(大臼歯) 110,000円(税込121,000円) |
リスクなど | ・5~10%の確率で将来歯根が膿んでくる可能性がある。 ・ごく稀に、もともと歯根に亀裂が入っており、治療しても改善しない場合がある。 ・歯の神経が非常に細いケースでは、場合によって完全に根管が閉鎖して治療しきれないこともあり、その場合は治療の成功確率が下がる可能性がある。 ・歯根が曲がっている場合、治療器具が途中で破折するリスクが高まる。 【注意点】根管治療だけでは治療は完結しません。通常はこの後、土台とかぶせ物が必要となります。費用もその分追加になります。 |