他医院で抜歯宣告された歯を回復させた症例
他医院で抜歯宣告された歯を回復させた症例
こちらの患者さまは奥の銀歯が痛くなったため、近所の歯医者さんに行ったら「歯が折れているかもしれないので抜かなければいけない」と言われ、何とかならないか?ということでネットでDr小泉を探し出して相談に来たとのことでした。
レントゲン撮影をしたところ、2本ある歯根のうち、1本の歯根周囲に黒い影が取り囲まれているのがわかりました(赤矢印)。
また、黄矢印の部分はもしかすると昔の治療の際に歯根に穴が開いて、そこに直接何かしらの土台の材料が詰められた可能性が考えられます。
このような状態だと、通常はどこの歯医者さんでも「抜歯しかない」と言われるか、歯根2本のうちの悪い1本だけを分割して抜くヘミセクションという方法かの2通りしか言われないでしょう。
しかし、患者さんはいずれも避けたいとのことでした。治る確率はかなり低い(20%以下)と予想されましたが、その点もご了承の上で、精密根管治療で歯の温存にチャレンジすることとなりました。
CTによる精密検査の実施
CT撮影をして、歯を3次元的にチェックしてみました。やはり歯根の1つにおいて、周囲の骨が比較的広範囲に溶けていることがわかりました。
精密根管治療の実施
精密根管治療の開始です。この前に応急処置で銀歯を外す処置を行ったため、この日は仮のセメントで詰まった状態からの根管治療スタートとなりました。
マイクロスコープで視野を拡大、口腔内の細菌が侵入しないよう、ラバーダムというゴム製のシートで当該歯を隔離し、精密な根管治療を実施します。
最初にラバーダムをかけてヨードで消毒をします。ところどころ茶色く見えるのがヨードです。この消毒方法は全身の手術と同じ方法を採用しています。また、歯の周りにはラバーダムシートとのすき間を埋めて唾液が一切入らないようにする特殊なお薬を貼り付けています。
歯の内部がかなりきれいになってきた時に、歯根の内側に穴が開いているのを発見しました(赤点線枠内)。これは治療前のレントゲンでも予測していたことでしたので特に驚くようなことはなかったですが、穴が案外大きく広がっているのがわかりました。
根管充填から約4ヵ月後
根管充填から約4ヵ月後のCTです。もともと溶けていた歯根周囲の顎の骨がだいぶ回復していることが分かります。ただ、この時点ではまだ患者さんご自身が歯に少し違和感が残っていると感じておられました。そのため、さらに3ヵ月ほど治りを待つこととしました。
根管充填から約7ヵ月後
根管充填から7ヵ月後。前回の4ヵ月後のCT像と大差はありませんでしたが、かなり顎の骨が回復していることが再確認できました。そして患者さんご自身も違和感を感じなくなったことから、治療を再開しました。
型どりの実施
かぶせ物の製作
かぶせ物(オールセラミッククラウン(emax))を製作しました。製作は経験豊富なジルコニアセラミックス東京の齋藤氏に依頼しました。
かぶせ物の装着・治療完了
emaxクラウンを装着した直後です。治療開始からここまで8ヵ月ほどを要しました。
長い期間ではありましたが、抜歯を回避できたことを大変喜んでおられました。ただ、もともとかなり歯が弱っていた状態でしたのでこれからが本当の勝負だと思います。
一歩一歩踏み占めるように、経過を観ていくこととなりました。できるだけ歯が長持ちするよう祈っております。
年齢/性別 | 50代女性 |
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治療期間 | 8ヵ月 |
治療回数 | 8回 |
治療費 | CT撮影 10,000円(税込11,000円) マイクロスコープ根管治療(大臼歯) 110,000円(税込121,000円) MTAセメント加算 22,000円(税込24,200円) ファイバーコア 26,000円(税込28,600円) emaxクラウン 115,000円(税込126,500円) |
リスクなど | ・精密根管治療をしても必ずしも違和感が消えるとは限らない ・精密根管治療に加えて歯根分割、外科手術など追加の処置が必要になる可能性もある。 ・クラウンを入れた直後~1カ月ほどの間は歯に違和感を感じることがある。 ・将来、歯根が折れてくる可能性がある。 など |