マイクロスコープを用いた精密根管治療の症例④
マイクロスコープ精密根管治療で根尖病変を改善した症例
左上のどの歯か分からないが、ものすごく痛くなって噛めない、とのことで当院を受診された40代女性の患者さんです。
被さっていた銀歯を触ると通常ならほとんど動かないはずの歯が、ピンセットで押すだけで揺れました。レントゲンを撮影してみると、左上の一番奥の歯は既に神経の処置がされており、歯根の先に黒い影が確認できました。
歯根の先の黒い影の部分に赤で色付けしてみました。典型的な根尖病巣と呼ばれる状態で、歯根の先に炎症が起きて顎の骨が溶けている、ということです。
また、問題の歯の内部に充填されていた黄色の矢印部分の充填材は、手前の歯の青い矢印のようにはっきりと白くは写っていませんでした。何かしらの問題があって充填材が不十分になっている可能性が考えられました。
精密根管治療の実施
マイクロスコープを用いた拡大視野の下、かぶせ物と土台を除去していきます。
理想を言えばこの最初の段階からラバーダムを使いたかったのですが、ラバーダムがかけられない状態でした。
そこで、まずはラバーダムを使用できる状態に持って行くことが1つ目の目標となりました。
(ラバーダム:細菌を含む唾液等が歯の内部に侵入しないよう、治療する歯を口腔内環境から隔離するためのゴム製のシート)
緑色のラバーダム(ゴム製のシート)を 治療する歯だけにかけて、歯とのすき間特殊な薬剤で封鎖します。そして、全身の手術と同じようにヨードにて術野をできる限り滅菌します。
※歯の一部やその周囲が茶色く見えているのは、その消毒薬の色です。
専用の超音波チップで機械的に清掃していきます。すると歯の中から腐敗した臭いがしてきました。患者さんもその臭いに気づき、歯の内部がかなり汚染されていることを実感されたそうです。
また、過去にこの歯を他歯科医院にて肉眼で何度か治療されたことがあり、なかなか良くならなかったことを思い出されておられました。
根管内部の清掃が完了
根尖孔の封鎖・根管充填
封鎖性に優れたMTAセメントを用いて、大きく開いている根尖孔を封鎖するとともに、根管充填を行いました。
根管治療の終了
年齢/性別 | 40代 女性 |
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治療回数 | 3回 |
治療費 | マイクロスコープ根管治療 79,200円(税込) MTAセメント加算 23,100円(税込) |
リスクなど | ・将来歯根が再び膿んでくる可能性がある。 ・ごく稀に、もともと歯根に亀裂が入っており、治療しても改善しない場合がある。 ・歯の神経が非常に細いケースでは、場合によって完全に根管が閉鎖して治療しきれないこともあり、その場合は治療の成功確率が下がるかもしれない。 【注意点】 根管治療だけでは治療は完結しません。通常はこの後、土台とかぶせ物が必要となります。費用もその分追加になります。 |