エクストルージョンを併用した精密根管治療の症例
エクストルージョンと精密根管治療で歯を保存した症例
こちらの患者さんは、前歯部のかぶせ物が頻繁に脱離するとの主訴で来院されました。当該歯については、他医院にて「歯の根が残っていないから抜歯」と診断されたとのことです。
虫歯が重症化し、歯根部分にまで虫歯が拡がると歯ぐきの上に出ている歯の部分(歯冠)のほとんどが無くなり、歯茎が覆いかぶさった状態になってしまいます。そうすると、通常の虫歯治療では歯にしっかりとした土台が作れないため、かぶせ物が頻繁に取れるようになります。また、最悪のケースであれば、抜歯という診断になることもあります。
そのような場合に歯を残すための方法として、エクストルージョンという方法があります。矯正力により歯を引っ張り上げ、歯ぐきの下にある根を露出させることによって、その部分に土台を立てることが可能になります。
また、右隣の歯も根の治療がうまくいっておらず、レントゲン画像では根尖部に透過像が確認できるため、根管治療を行う旨を患者さんに説明し、同意をいただきました。
エクストルージョンの実施
右1番の歯にエクストルージョンを行う器具を装着しました。前歯部のため、かぶせ物を外して仮の歯を装着し、審美性も確保致しました。
左の画像から右の画像へと、少しずつ歯の根が引っ張り出されています。約3ヵ月後、エクストルージョンが完了。歯の根が歯茎より上に出ていることが確認できます。
根管治療の実施
エクストルージョンで歯を引っ張り上げた後、右側1番・2番の歯に根管治療を実施いたしました。
▼右側1番の歯
マイクロスコープを用いた拡大視野の下にて根管治療を実施致しました。根管内が完全にきれいになっていることが確認できます。
根管内を綺麗にした後、細菌の繁殖スペースを残さないよう、充填材を用いて根管を塞ぎました。
▼右側2番の歯
右側2番の歯も、同じくマイクロスコープを用いて、精密な根管治療を行いました。
こちらも1番の歯と同じように、根管内を綺麗にした後、細菌の繁殖スペースを残さないよう、充填材を用いて根管を塞ぎました。
歯型の採取~かぶせ物の製作
治療完了
土台の歯に装着し、最終的な咬み合わせを調整して治療完了です。周囲の歯と色調も合わせ、自然な仕上がりになりました。患者さんにも「抜歯と言われた歯を残すことが出来てよかった」と喜んでいただけました。
年齢/性別 | 50代/男性 |
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治療期間 | 10ヵ月 |
治療回数 | 15回 |
治療費 | エクストルージョン 110,000円(税込) 矯正調整料 6,600円×4(税込) マイクロスコープ精密根管治療(前歯) 60,500円×2(税込) ファイバーコア 27,500円×2(税込) かぶせ物 ジルコニアSクラス 154,000円×2(税込) 合計:620,400円(税込) |
リスクなど | ・歯と骨がくっついていた場合はエクストルージョンができないが、それは施術してみないと分からないことがある。 ・エクストルージョンにより相対的に歯が短くなるため、歯根破折のリスクが残る。 ・根尖病巣が将来発生する可能性がある。 ・咬みあわせの不調などによって、過度な力がかかった場合にかぶせ物が欠けたり、外れたりする可能性がある。 |